■高齢者の3つの不安
高齢者には3つの不安があると言われています。「健康不安」、「経済不安」、「孤独不安」です。
「健康不安」は高齢になればなるほど、大きな不安となります。若いときには大事に至らなかった「風邪」や「骨折」が長い闘病生活のスタートになる可能性があります。それがいつ起こるか誰も解りません。大きな不安です。この強迫観念から日常生活自体が、「出かけない」「無理をしない」という守りの生活になりがちです。
「経済不安」は上記のようなことをきっかけに、いつ大きな物入りがあるか解らない上、多くの人の生活は今までの貯蓄と年金で成り立っているため、貯蓄や収入は増えることなく減る一方という不安があります。この貯蓄が減る不安は高齢者だけではなく、若い人でも同じです。
そして「孤独不安」です。いつ連れ合いや友人を失うか解りません。孤独になると今までやらずに済んでいたこともする必要があります。買い物、洗濯、掃除、補修、通院、各種手続きなど、たくさんのことを自分でしなくてはならない不安は大きいでしょう。特に連れ合いに頼っていた人はとても大きな不安となります。その不安が健康を蝕むこともあれば、食生活が大きく変わることで、健康不安にも繋がります。また、出費が増えることで経済不安にも繋がります。
このように高齢者の不安は連鎖を呼ぶのです。
■不安と不満と不便
地震の時に、食料が配給されない、寝るところが無いなどは「不満」と言えます。水の配給制限がある、電車が動いていないなどは「不便」と言えます。津波や余震が来るかも知れない、いつまで避難生活が続くのだろうか、と言ったことは「不安」だと思います。不満や不便は我慢できたり、それが解消されることを考えると希望に繋がったりしますが、不安は解消されない限り、ずっと残るものです。そのずっと残る「不安」を3つも抱えているのが高齢者なのです。
■不安と不満と不便をどうやって解消するか?
(1)「物理的」距離の問題
高齢になると体力がなくなり、股関節やひざに障害が出ると、歩行が困難になり、生活できる範囲が極めて狭くなります。その範囲の中に、交通拠点(駅やバスターミナル、タクシー乗り場など)がある、買い物ができる場がある、いざと言うときに備えて医療施設がある、更に介護保険のお世話になることを考えるとデイサービスなどの介護施設がある、ことは重要だと思います。
高齢になればなるほど「医療」「介護」「住居」が指呼の距離にあることが大切でしょう。救急病院の勤務医から聞きましたが、「あと数分遅かったら危なかった」という事例は多いそうです。
(2)「心理的」距離の問題
地域の医療・福祉サービスと物理的な距離が近いことは「イザと言うときに安心」という心理的な距離も近くなります。このストレス軽減は大きいです。上にも書きましたが、「出かけない」「無理をしない」という守りの生活よりも、ポジティブな生活の方が、人生は豊になります。人生のエピローグを我慢ではなく、積極的に生きた方が「健康的」です。
(3)認知症への不安
「物覚えが悪くなった」と認知症は違います。自分が認知症では?という疑いをもって生活をするのは、嫌なモノです。でも、それを相談する先が無ければ、ずっと抱え込むか意を決して医師の診断を受けなくてはなりません。でも、かかりつけ医が認知症の専門医であれば、どうでしょうか? 遠慮なく、相談できます。認知症の専門医である当院には「認知症診断プログラム」があります。それを使えば、不安が解消されます。もし、認知症と診断されても、進行が進まないような指導や処方をさせていただきますから、安心ください。
医師に相談できない場合は、認知症に詳しいケアマネジャーに相談すると良いでしょう。当法人は、認知症に秀でた「居宅介護支援事業所 綿ぼうし」を運営しています。二人のケアマネジャーがいますが、人間的にも優秀ですので、遠慮なくご相談ください。
(4)認知症への対応
認知症になるとその進行を遅らせる方法を実行していただき、薬を使う場合もあります。認知症の改善に強いデイサービスを利用されると効果的です。当法人が通所リハビリセンター「らくじゅ」を運営しているのもそれが理由です。
それと、本人の努力も必要ですが、家族の理解とケアがとても重要です。ですが、プロでない家族がケアするのは実際は難しいです。自分の家族が認知症ならではの振る舞いをするのを見るのは辛いでしょう。認知症から出てくる言動であることが解っていても、苦々しく思うことがあります。
ではどうすれば良いのでしょうか?
(5)サービス付高齢者住宅での生活
日常を家族に見て貰えなくても、高齢者向け賃貸住宅のスタッフが家族の代わりに気に掛け、ケアして貰うと良いと思います。当法人が入居している「ヒルトップ壱番町」は4階以上が、サービス付高齢者住宅です。サービス付高齢者住宅には「介護型」と「自立型」とありますが、「ヒルトップ壱番町」は自分でできることはできるだけ自分でできるようにすることが大切、ということで「自立型」のサービス付高齢者住宅です。ここで暮らして行く中で、認知症などの高齢化ならではの不安がでれば、入居者のご様子を定期的に伺う専門スタッフに声を掛けて下さい。介護系の資格を持っていますので、ケアマネジャーへ繋ぐ、認知症専門医院である当院での診断を勧めるなどしてくれます。
■まとめ
認知症に限らず、高齢者になる不安は、本人にも家族にもあります。その不安を少しでも解消するには、「医療」「介護」「住居」が物理的にも心理的にも近い距離にする、ということが一つの解決方法であることをご理解いただけましたでしょうか?